《多次元メガロマニア》

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使用方法は、トピック【遊び方】をお読みください。

この掲示板は、秋田禎信先生の作品大好きな皆様の、ネタの共有を目的とした、お遊び企画です。
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【オーフェン】市長の休日 asato URL

2011/07/13 (Wed) 12:39:34

ラポワント市のサルア市長の休日ってどんなのでしょうね。
彼がどう休日を過ごすのか、覗いてみたいです。

Re: 【オーフェン】市長の休日 - 諷里 URL

2011/07/13 (Wed) 21:35:59

 妻から「あんたの私服、なんていうかいつまで経っても藁っぽいのよね」と指摘されたからではないが、休日の外出着は日頃の背広(無論ネクタイは抜きだ)、もしくは上下ジャージの二択になっている。
 なにがどう藁っぽいのかは分からない。色合いなのかデザインなのかそれとも加齢臭なのかは分からないが、藁ではなく海藻と言われていたなら即座に違和感を感じただろうから、実際問題藁っぽいのだろう。最前線から身を退いて剣をペンへと持ち替えた時から、肉体の基礎代謝はその地位に似合えという社会的要請に応えて順調に生まれ直している――暇を持て余した飼い犬の散歩が、悲しいかなまっとうな全力疾走になってしまう程度には。
 散歩の途中で立ち寄った公園のベンチで、男は誰に語るでもなく愚痴ずさむ。
「俺が遊び相手になる暇がないからペット飼うの認めたってのに、いざ飼い始めてみたら休日は俺に犬の世話押し付けて自分が友達んトコに遊びに出かけちまうってのはどうなのかね。なあ」
「俺に聞くな」
「お前さんトコのあの子も、そのうちこうなるんだぜ? 別に休日まであんたがわざわざ俺をガードする必要もないだろうに」
「順々に団員の都合を尋ねた結果、偶然俺が空いていただけだ。カーロッタ派の脅威が完全には消えていない以上は、万が一の事態は避けねばならない」
「あー、そうかい。んじゃまあ、そういうことにしとくさ」
 気配を周囲に溶かしつつもすぐ傍に佇んでいる護衛に対して、サルア・ソリュードは肩をすくめる。どこまで煮込んでも噛み合いそうもない話は、早々に打ち切った。
 たまの休日の朝。味が無くなるまで惰眠を噛んで噛み飽きてようやく起きた頃には、娘はとっくに朝食を平らげて友達の家へと出掛けている。「おはよう」と声を掛けてすら貰えない自分と、あの子の「おはよう」に未だにどう応答すればいいか量りかねているらしい――ラッツベインの耳寄り情報――この“隊長”。休日ぐらいは環境を交換してくれたって罰は当たらないだろうに、と、居るだけの神様に向けて溜息を放った。
 隊長が口を開く。
「前から言おうと思っていたんだが」
「ん?」
「そんな目立ち易いジャージ姿よりも、あんたは私服姿の方がより世間に紛れる気がする」
「家内にもそんなことを言われたよ。あーそーだな、私服着て牧場に積まれた藁の中にでも隠れときゃカーロッタ派からも神人からも死ぬまで見付からずに済むかもな」
「うまい例えだ」
 その返答が本気で感心しているようにしか聞こえなかったのは、当然、聞こえなかったことにした。

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